「th」の変化です。子音 [θ] ,[ð]の発音自体が、直前に「n」がある場合に、thの発音がされなくなりn化する現象が起こります。これは省エネ発音をする口語英語の傾向で、th音を口から空気を抜かずに発音しようとするので、鼻の中に籠ったような音になります。
この変化は、他のリエゾン紹介ブログにも、ちょいちょい顔を出している変化の法則です。
ここでは、ほかの事例についても覗いてみたいと思います。
「Women change so drastically when they graduate from high school.」
まずtheyのゼ[ð]の発音がどこにも見当たらないのは、前の単語のwhenのnに引っ張られているためです。whenの発音がウェンと聞こえないのは、ここ(whenの発音)で紹介しています。「when they」は、カタカナで表すならウネィ[wənéi] 。文中に埋もれてしまうようなか細い発音なのは、聞き逃しても意味が捉えられるものは極力このように省略してしまいます。まずは知識レベルでこのように発音されることを理解して、実際の英会話中には聞き逃しましょう。では、次です。
「But I’d be lying if I said I’d never dreamt of doing that.」
ing + th の組合せの時も、gの発音が消失するため、同じことが起こりやすくなります。doingのdoin(ドゥーイン)の「n」と変化して、that(ザット)がnat(ナット)に変化してこのような発音となります。次の例も見てみましょう。
「Ask anybody in this room and they’d say “Sure! Mysteries? Why not?”」
「You know that, right? I mean you do realize that, don’t you? You don’t have any place to channel all that adolescent frustration boiling inside you. Isn’t that what’s really fueling all this impulsive behavior?」
単語の末尾のt/dは、発音しない。そういうルールがあります。nの直後に、t/d と th が並ぶと、t/dの存在は無視され、thの音がn化する形となります。例文の「and they」や「isn’t that」は、それぞれt/dが消失し、thがn化し「ナット」という発音に変わっていると思いますが、それ以外のthatは直前の単語にnの発音がないため、従来どおりの「ザット」で発音されております。
英会話における音の変化は、あくまでも音と音のつながりによる変化です。それは謂わば、空手の型のようです。高きから低きに水が流れるかのような自然の態で、無意識に体が動くかのように、nという歯の裏に舌を充てて発音する舌の形からthの上下歯の間に舌を入れる過程において発音をすると、このような音の変化が自然に起こるわけです。スペルの配列に惑わされてはいけません。あくまでも音と音の繋がり(リエゾン)の中に、舌の型のルールに則って、音の変化は発生するのです。