さぁ、まだアナランドの居留地からすら1歩も出れていないゲリ雄。
原作のゲームブックでは、半ページで済んでいた情景ですら、選択肢と「英語」の壁に圧倒されて食傷気味です。ですが、旅の前には周到な準備を重ねに重ねても、それは無駄ではありません。
では、ここで画面に下にあるアイコンから、もう1度おさらいしてみましょう。
まだ開いていないアイコンで「Items」というのがあります。それを見てみましょう。
このアナランドを発つまでに、手に入れた戦利品の数々です。旅の中で手に入れたアイテムは、ここの表示される模様です。思えば、原作のゲームブック版では本の冒頭にステータスを書き込むページがありました。このソーサーリーシリーズでは、旅の中でアイテムは山ほど手に入ります。消しゴム片手にアイテム集めにも専念していた思い出が蘇ります。守銭奴のゲリ雄は早速Treasureをタップします。
金貨の枚数は、ここでチェックできるようです。24枚の金貨を手に取り、卑下な笑みを浮かべるゲリ雄。ここのアイテムボックスに、Sorcery特有の魔法のアイテム、ゴブリンの歯やジャイアントの歯や千葉真一の歯など、様々なアイテムが納まることになるのでしょう。楽しみです。
一方、Weaponの欄には、ゲリ雄愛用の一振りの剣があるだけでした。原作でも、色々な武具が出てきました。このWeapon欄にも、旅路を進めていけば、兜や幅広の剣や千葉真一の歯など並ぶことでしょう。これも、楽しみです。
そして、アイテム欄の中央を大きく占めている魔術書。それをタップすると、ゆとり世代よろしく、旅路の途中、いつでも、どこでも、この40種類の魔術書の中を確認することができるのです。画像には、スタミナ7を消費する最終魔術「ZED」の記述があります。こんな門外不出の魔術が記載した魔術書を、明日にも追い剥ぎに遭いそうなゲリ雄に託すなど、アナランド王も狂気の沙汰としか言いようがありません。ですが、そんなこっちゃは知ったことではありません。ゲリ雄は命がかかっているのです。生存確率が1%でも上がるのであれば、旅の合間、暇さえあれば魔術書を読み込んで、まだ見ぬトラップや謎解きに備えをしてまいりましょう。
さぁ。出発です。武具よし! 金子(きんす)よし! 魔術書よし! いりこよし! アスコルビン酸よし! わかもとよし! 全部よしっ!
食べ物だけは手に入りませんでしたが、原作では至るところに食えるものはありました。旅の中で調達することにしましょう。
アナランドから外界へ出るカントパーニーの扉。目指す選択肢はここだけです。もう一つの選択肢であるグランドの中央では、コスプレ男が上半身の服を脱ぎ、屈伸などをしてセメントマッチの準備をしていますが、完全に無視し、カントパーニの扉へ向かうゲリ雄。それに気がついたのか、コスプレ男は泣きそうな目をしてゲリ雄の後を走って追ってきます。
駆け寄る涙目のコスプレ男を余所に、ゲリ雄はGoogle翻訳を使って、出てくる英文の単語をざっと調べます。
どこかの偉い英語教授「英語の多読は、辞書を引かないことです。流れるように原書そのままのペーパーブックの余韻に引き込まれながら・・・」
ゲリ雄は、30秒ほどで英文中の単語を舐めるように確認をしながら、コスプレ男の到着を待ちます。どうやら、ここでは初めて魔法がお目見えする場面のようです。唱えるべき記念すべき最初の魔法は「DOP」。俗に言う「アバカム」です。では、唱えましょう!
seal:〔開けられないように〕~を封印する
place:~を置く
for some time:しばらくの間
deter:防ぐ、防止する、抑止する
raider:侵略者
craft:~を巧妙に作り上げる
ぉおっと、画面がいきなり上空にスクロールしたかと思うと、遍く星の如く、天に無数のStarsであるアルファベットが浮かび上がりました。
ゲリ雄「・・・・・・ふん」
再び、ゲリ雄が鼻でせせら笑います。どうやら、この宙にたゆたうアルファベットの欠片をタップし、3つのアルファベットの並びを成立させ、呪文として完成させるようです。なるほど。原作に沿いながらも、中々憎い演出です。無論、間違った魔法を選択してしまうと「そんな魔法はない!」と言われて、体力を削られるのも、恐らく原作通りなのでしょう。ゲリ雄は、躊躇なくアルファベットを選択して、魔法を紡ぎあげます。
ゲリ雄「DOP!」
Sorcery!では、ドラクエで言うところの「MP」という概念はありません。魔法を唱える(cast the spell)ことにより、消費されるのはスタミナというのが、この1983年にリリースされたこのゲームブックのシステムです。原作に忠実に、ゲリ雄のスタミナが「1」消費されます。
ゲリ雄「ぐ・・・」
だるい嫌悪感と共に、ゲリ雄の髪の毛が数本ひらりと抜けて行きます。これが自然の摂理から魔法の奇跡を引き出すことの代償です。
目の前の扉が、魔法によりガダガダという音を立てて、開いていきます。息を切らしたコスプレ男が言うには、この扉は以前、マンパン砦に向かって出発した前任者が通った以来、開いていないということです。これから向かう旅路の中で、もしかしたらその男と会えるかも知れないとコスプレ男は言います。そんな問いかけにゲリ雄は・・・
weave:〔複雑なものを〕組み上げる
tumbler:〔錠の部品の〕タンブラー
creak:きしむ
groan:うなるような音を立てる
hinge:《工具》ヒンジ、蝶番
hail:霰、雹
canvas:テント◆天幕
ゲリ雄「ふん。奴は死んでいるに決まっている(I am sure he is dead.)」
と、にべもなく答えます。コスプレ男はゲリ雄の性格をもう理解したのか、軽く頷くだけで遠い地平線の向こうを見つめています。ここで英文で、transformedが、イタリック状になっているのが気になります。訳するならば「変わり果てた姿」ということを表現しているのでしょうか。マンパンの王に捕まり、脳をくちゅくちゅといじられて「ぁ・・・ァ・・・」と呟いている前任者を想像して、背筋に冷たいものを感じるゲリ雄。また髪の毛が数本抜けて行きます。
peer:じっと見る
transform:〔~の外形を〕変形する
stand back:後ろに下がる、後ずさる
コスプレ男は、地平線を遠い目で見つめます。その方向は、ゲリ雄の目的地であるマンパン砦。コスプレ男ら、サイトマスターと呼ばれるマッチョなお兄さんたちは、どうやら幼少から「遠目」という特殊なスキルを持ち合わせている変態を揃えているとのことです。コスプレ男の目には、何が映っているのでしょうか?ゲリ雄は気になります。
step into:~に足を踏み入れる
murmur:つぶやく、ささやく
telescope:望遠鏡
cannot help but:~せざるを得ない
ゲリ雄「何が見えるんだ?」
コスプレ男は大雑把にカーレまでの道筋を教えてくれます。英文を読むに当って、英単語は壁になりますが、その物語特有の地名などの固有名詞は、都度Readingの妨げになります。ここで、ざっとこのSorcery!シリーズの「魔法使いの丘」で出てくる地名の固有名詞をおさらいしてみましょう。
Kakhabad(カーカバード):アナランドからマンパンまで含む地域の総称
Analand(アナランド):王たちの冠を盗まれた王国。ゲリ雄の出身地。
Shamutanti(シャムタンティ):Sorcery! 1章「魔法使いの丘」の舞台。
Khare(カーレ):Sorcery! 1章「魔法使いの丘」での目的地。
Manpan(マンパン):王たちの冠を盗んだ王が住まう城。最後の目的的。
Baklands(バグランド):カーレとマンパン砦を挟む荒野。
Cantopani(カントパーニ):アナランドに隣接している居留地。
その他、Kristatanti等々、シャムタンティの村々の固有名詞は出てきますが、通過点に過ぎないのでそうそうScriptに頻出することはないでしょう。ざっと、第1章では地名に関しては、これらの固有名詞を覚えていれば多読の妨げの一つは取り除くことができるでしょう。
ゲリ雄「そ、その次は?」
不安一杯のヘタレのゲリ雄は、できるだけ情報を引き出そうと必死です。
コスプレ男はカーレの先は、遠すぎて見えないと首を振ります。今まで言っていた内容も、はたして見えていたかも疑わしいです。ここで言う「カーレ」は、原作ゲームブックで言う第2章「城塞都市カーレ」、そしてここで出てきた新しい固有名詞バグランドが第3章「7匹の大蛇」の舞台となります。長い長い旅路がまだまだ続いていますが、その旅路もこの1歩から始まるのです。
ゲリ雄は、ようやく長い前置きを経て、カントパーニの門をくぐりました。さぁ、出発です。
reveal:〔隠されていた物を〕見せる、公開する
rest on:~を当てにする、~に頼る
crisp:〔天候などが〕爽やかな、心地良い
とうとう出発です。今、ゲリ雄が抜けた門から1本道が続いています。マップをズームバックすると、その先に村らしき集落があります。マップ上には切れていますが、カントパーニと書かれています。ここが、まず向かうべき通過点となりそうです。ゲリ雄は震える指で、自分の駒をタップし、目の前の青い旗へ歩みを進めます。
The path winds… は頻出表現です。windには、「道などが曲がって進む」という意味があります。覚えておきましょう。このSorcery!では、場面場面が変わる度に、情景を説明する英文が流れていきます。場面の情緒を伝えるために、色々な表現をくどいぐらいに重ねて訴えてきます。ここで負けずにしっかりとGoogle翻訳を使って、コンマ数秒でわからない単語をざっとなぞりながら、物語の中に、ゲリ雄にシンクロしていきましょう。ほら、あなたの頬骨も尖って来ましたよ。ふふ。
wind:〔道などが〕曲がりくねる、曲がって進む
slope:坂、傾斜地、丘
scrubland:低木地
deserted:人けのない、さびれた
eerie:薄気味の悪い、不気味な
caw:〔カラスなどが〕カーカーと鳴く
presence:存在
カントパーニの門が出発し、1時間ほど歩いたその時です。空気の質が変わってきたことにゲリ雄は気付きます。
ゲリ雄「屁か・・・?」
違います。
ゲリ雄「ぅ・・・」
ゲリ雄が胸を押さえて苦しがります。わずかカントパーニの門から1時間ほど外を歩いただけです。実は、それほどアナランドの外は呪われた地だったのです。無数の汗がゲリ雄の額を伝い、手の震えが止まりません。ゲリ雄はGoogle翻訳を取り出し、必死に今の状況を調べ始めます。
震える指で、アプリをGoogle翻訳に切り替えます。震える指でも単語をタップするだけなので、素早く分からない単語の意味を追っていきます。タップの度に、英文の意味が徐々に深まるにつれ、更にゲリ雄の指が震えることになります。
ゲリ雄「な、なんだどぉ!」
そこには、原作にもない衝撃な展開が赤字で記されていました!
barely:〔数量が〕わずかに
foul:〔匂いが〕嫌な、鼻につく
infest:~に群がる、出没する、はびこる
pestilence:ペスト、悪疫、疫病
sap:~を弱らせる、〔活力などを〕徐々に奪う
nauseous:吐き気を催す
シャムタンティが隣接するバグランドからもたらされた疫病により、このシャムタンティの土地は病に犯されていたのです。無菌のアナランドでぬくぬくと育って来たニートのゲリ雄に、社会の荒波は無常にも立ちはだかります。その代償として、この病はゲリ雄からスタミナを奪っていったのです。ゲリ雄はマップ画面の左上のスタミナを見て驚愕します。
10
先ほどまであったはずのスタミナ「20」が、たった1つの選択肢で10も下がっています。それもただのスタミナではありません。最大スタミナの上限値自体から「10」に下がっているのです。
ゲリ雄「糞! 聞いてないぞ! こんなこと! 聞いてないぞ!」
ニート特有の癇癪を繰り返すゲリ雄ですが、頭上で旋回するカラスが聞いているだけです。ゆとり向けのゲームと言ってごめんなさいという感じですが、最早どうすることもできません。このシャムタンティの丘は、最大スタミナ「10」で攻略しないといけないようです。悔しがるゲリ雄の前に、無常にも次の選択肢である青い旗が現れます。
ゲリ雄「糞! 聞いてないぞ!」
遠い澄んだ空にゲリ雄の怒号が響き渡り、それに答えるように一羽のカラスが旋回をしました。
Sorcery!攻略4日目「カントパーニの村」に続く